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Resonance

快復への道のり

雌鶏のバーブ。

イギリスで出会ったイギリス人の旦那さんと帰国して、カフェを開いた女性がいた。

 

カフェというか、農場の中にある、自宅と、そしてカフェと。

 

里山を、つてを手繰り寄せて買い取り、ここを平らにするのは無理、と土木業者に断られても、二人で樹を切り倒し、土を削り取り、細かく砕かれたアスファルトのリサイクル産物を撒いて、長い長い私道を引いて、ソーラーパネルを載せて、薪ストーブを設置して。

 

敷地の大半は農場だ。

なだらかに傾斜した畑地には、玉ねぎやわさび菜、ジャガイモ、大きなチンゲンサイ、小さなチンゲンサイ、白にんじん、サラダ菜、ビニールハウスの中の、甘い甘いスイートペッパー。

なんとなく植えられて茂っているパクチー

ひとかけら口にしただけで目醒めるような、ホースラディッシュ

 

奥の奥には、広く網で覆われたエリアがあって、中では、一羽の雄鶏と、三十羽の雌鶏たちが放し飼いされていた。

鶏は群れの中に厳密な序列社会を持っていて、その中に飼い主も組み入れられるという。

最上位は必ず旦那さんだけど、第二位は必ずしも奥さんとは限らず、雄鶏との闘いになることもあるのだという。繁殖期になると伸びてくる、脚の後ろに突き出た爪で突かれて、何度も流血した、と笑っていた。

群れの中の最下位の鶏は、他のすべての鶏たちからつつかれ、時には死んでしまうこともあるという。

 

そんな中、彼らがこの地に最初にやってきてから、ずっと最下位の座にいた雌鶏の名が、バーブだ。

つつき回されて追い立てられても、バーブはどこ吹く風で、群れを離れて自由に闊歩し、つい最近までの約4年間もの間生きていて、これまでの最長寿記録だそうだ。

 

彼女は、どんな風に生きていたのだろう。

 

 

そんなことを考えながら歩く僕の足元に「ネコさん」と名付けられた夫妻の猫がずっと付いて回っていた。

「キャットさん」はリビングの机の上で微睡んでいた。

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