Resonance

快復への道のり

ワンダさん

僕がまだ、研究室に配属されたての頃だから、ドイツワールドカップをやってた2006年のことだろう。

 

カイコ(より正しく言うと、カイコガの幼虫)を研究対象に、殺虫性タンパク質の解析や、昆虫の自然免疫系や、味と匂いを受容する遺伝子群を探していた、なんとも雑多な研究室。

 

カイコは、脱皮を4回した後に絹糸を吐いて、繭を作り始める。その時に、足場となる適当な角を探し求めて、ふらふらと歩きまわる。その行動を、昆虫学的にはワンダリングという。

 

僕の研究室の入っていた研究棟は6階建てで、農学系と工学系が同居する、どちらの学部でもなく、どちらの学部でもある大学院研究科だった。

そして、うちの研究室で謎の存在感を放っている博士課程の女性を求めて、はるばる他の階から、さしたる用事もなくふらふらと現れる、分厚いメガネと無精髭と、たどたどしい喋りの年齢不詳な博士課程の男性がいた。

彼がワンダさんだ。

 

おしまい。

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