Resonance

快復への道のり

過去のことは過去のこと

いわゆる、他人と過去は変えられない、のうちの、過去への執着や後悔をするべきではない、というおはなし。

 

御茶ノ水の「穂高」は、ごくあっさりとした昭和の香りと佇まい。どんぐりを拾っていた友だちにわざわざ出向いてもらった、とはなんだか不思議だけど。

 

話していて、やはり、自立した個人だな、と思う。

彼女なりの葛藤を乗り越えて、決断し、必然的に退路を断って異国で学ぶことを選んだのだから。

 

僕には選べなかったし、思いつきもしなかった留学という選択肢。

より正しく言い直すなら、博士課程に進むかどうかを思い悩んだ時点では、選択肢にあったのだ。

だが、たとえば米国の大学であれば、修士課程の学生は、国なり大学なりから給与と研究費を受け取って研究するプロ。もし、留学するのであれば、修士課程からか、あるいは日本で博士号を修めてから、というのが、ごくごく現実的な選択だったので、すぐにその選択肢は外れた。

そもそも修士課程に進んだのは、学部を5年間かけて卒業してしまったので、最終学歴をピカピカの修士卒に上書きしたかった、といういわゆる学歴ロンダリングだったしね。

そこで得たものは大きかったから、修士論文で所期の目的を大幅に下回る成果しか発表できなかったことも含めても、いい時間を過ごしたよ。

 

また回想してる。

過去のことは過去のことなのだ。

 

高校。たまたま名前の気に入った県立高が、名古屋の都心にあって、学力的にも精一杯、という感じだったから、あっさり選んだ。そこに決断力はとくに要していない。

 

大学。生物系が学べる、なにより東京の大学を受けたかったから、東京理科大学東京農業大学東京農工大学を受験して、見事に「東京」にしか行けない選択をした。

滑り止めだったはずの私大には全て落ちて、国立大前期試験も落ちて、後期試験は英語と小論文のみというなんとも文系向きな科目だったので、ようやく受かった。7人しか拾われなかった後期入学者の1人になれた。実に幸いではあるけれど、そこには大した決断を要していない。

 

就活。製薬、食品、バイオその他とにかく出しまくってことごとく落ちた。大塚製薬には創薬研究員としての採用枠で、最終面接の徳島本社まで呼んでいただけたけど、落ちた。思えば、あの頃の大塚は株式上場前で、かつ、ブロックバスターと呼ばれる年間売上が1000億円を超える製品をひとつ持っていたから、おそらく物凄い人数を徳島まで呼ぶだけの採用コストをかけていたんじゃないだろうか。昆虫が専門で、特に熟達したテクニックも有さない農学部生を本社に呼んでみる程度には余裕があったのだ。好きな会社なんだけどね。

結局潜り込めたのは、誰も名も知らない、ワンマン社長が語る中韓への事業展開への夢が大きいばかりで、売り上げは伸びず、現場はまったく案件が取れていなくて士気がガタガタレベルの臨床開発受託企業。妥協の産物でしかない。他に取れた内定は、これまた業績が底を這うような、研究試薬の開発販売をしている小さな小さな会社だったから。

事業拡大の夢に向かってトップダウンでアホみたいな人数を採用してたから、入れた。

受託案件が終わるごとに先輩社員は辞めていった。新規案件はないから、僕ら世代は常に社内待機。派遣の案件に、お前行かないか?と振られた時には全力で断った。派遣されている間に会社が消えるような気がしてた。

 

転職。すぐ隣の席の先輩社員がどこに行くとも言わず、退職していった。なにより、最後にして唯一の拠り所だった、僕にとっての彼女に見放された。辞めようと思って、転職エージェントを介して、2社だけ受けて、泣きそうなほどの圧迫面接を受けて、悄然として家路についていたら、つい先ほどの面接官から「採用にしといたから」と個人の携帯からの連絡。かくして今の会社で、臨床開発を担当できることになった。入社して早々に、即戦力待遇でチームに組み込まれて、怒涛のスタートだった。社会人している気がした。

辞めて転職しよう、それが、決断らしい決断。ただし、周りに大いに影響を受けてはいるけれど。

 

結婚。そもそも付き合いはごく自然に始まった。ちゃんと告白もしないうちから「僕と一緒に暮らそう」とか言ってたんだから、そこに決断力なんてまるで伴っていない。

 

仙台移住は大きな大きな決断ではある。たしかに。実感はない。時間はある。選択肢は、ものすごくたくさんある。可能性は自ずと狭まるのかもしれないが、それはもう縁だ。

何を大切にしたいのか決めるのもまた、僕だ。

 

そう思えた。

過去のことは過去のこと。

教訓めいた言葉にはできないけれど、休職せざるをえない状況にまで追い込まれたのだから、学んだのだ。

 

今、そして未来を見よう。

20年後にどうしていたいかから考える、というの、とてもいいな、と思った。

まだまだ、視野は広げられそうだな。

 

 

おやすみ。